日本の家の問題点
家の平均寿命はドイツ約79年、アメリカ約67年に対して
日本は半分の約32年。欧米に比べて日本の家は短命!
家の平均寿命を先進各国で比較したとき、ドイツ約79年、アメリカ約67年であるのに対して、日本は半分以下程度の約32年という結果が出ています(※0)。また中古住宅の市場に目を向けると、新築も含めた住宅の流通数において中古住宅が占める割合はイギリス約86%、アメリカ約90%であるのに対し、日本は約14%とかなり低い割合となっています(※1)。さらに住宅投資のうちでリフォームが占める割合を各国で比較した場合、ドイツ約77%、イギリス約57%であるのに対し、日本は約28%というデータ(※2)もあります。つまり欧米では家を長持ちさせた上で、実子以外にも家が引き継がれていくような市場が確立されているけれども、日本において中古住宅はあまり重要視されていないということが考えられます。家の寿命が約32年ということもあわせて考えると、日本では「家を使い捨てにしている」と言っても過言ではないでしょう。
第二次世界大戦からの復興から、住宅の「量」より「質」を重視する
方針へシフトした環境先進国・ドイツ。その一方で、安価で施工しやすい
〝お手軽な家〟をいまだに建て続けている日本
ドイツは戦後すぐに住宅の「量」ではなく「質」の向上を重視する方針へと転換し、現在では各州の建築基準令や「DN規格(ドイツ工業規格)」によって住宅に使われる建材に厳しい基準がもうけられるなど、「環境先進国」と呼ばれるのにふさわしい住宅のクオリティを誇るようになりました。同じように戦後の復興を目指していた日本の家はと言うと、安価で施工しやすい部材を使った〝お手軽な家〟が数多く建てられているのが現状です。こういった材料で建てられた家はメンテナンスしにくく、建てた後はどんどん劣化していくだけ。さらに日本は少子高齢化の一途を辿っており、40年後の2060年には人口が8700万人にまで落ち込むという推計も出されています。そうなると現在どんどん新築されている〝使い捨ての家〟はそう遠くない未来、劣化して誰も住むことできず大量の空き家となっていることでしょう。
安価な部材で建てられた日本の家には、部屋にも構造体にも結露が
発生。結露がカビや腐食の原因となり、結果的に家が長持ちしない
窓のような場所につく表面結露は拭き取ることもできますが、家の内部構造などで発生する内部結露は発生しているかどうかも見えないし取り除くこともできないので、知らず知らずのうちに家の構造体が結露によって腐食していくということがありえます。大切な住まいに結露がつかないようにするには、室内の水蒸気を屋外へ逃がせばいいのですが、日本の〝使い捨ての家〟には安価な建材が使われており、そういった建材が水蒸気を通さないため、湿気が室内や構造体内部にこもってしまうのです。
家庭内事故死の方が交通事故死よりも多い日本。つまり外より家の中の
方が危険!?
近年の研究に、家庭内事故死は交通事故死の1.7倍以上起きているというショッキングなデータがあります(※3)。家庭内事故死の原因として多いのが「ヒートショック」。これは部屋から部屋へと移動する際に温度差がありすぎると体に悪影響が及び、最悪の場合は死に至るというもの。このことから考えると「人体に悪影響を与えかねない〝部屋どうしの温度差〟に対し、日本の家は十分な対策が取れていない」ということなのでしょう。そして「同じ家の中における温度差」を軽減するには住まいを断熱化することが必要ですが、住まいの断熱化に注力しているドイツでは、冬場の心疾患による死亡率を比較的低めに抑えられています。またイギリスも近年「室温の低さ」が人体に与える悪影響に注目し始め、冬場の最低室温として「18℃」を推奨しています(※4)。日本でヒートショックが多発している現状を見ると、「日本の家は断熱化が不十分である」と言えるのではないでしょうか。
熱中症の発生場所・第1位は、なんと家の中! 「遮熱」をおろそかに
している日本の家
近年全世界的に気温が上昇傾向にあり、真夏日・猛暑日・熱帯夜などが今後いっそう増えると考えられています。現に熱中症が原因と見られる死者の数を見ると1990年代以前では年平均67人だったところ、最近では年平均492人にまで増加しており、20年程度前の約7倍の死者数となっています(※5)。しかも屋外よりもむしろ家の中にいるときの方が、熱中症になるケースが多いというデータもあるのです(※6)。そうなると住まいを断熱化して熱を逃がさないようにするだけでは十分でなく、外からの熱を遮断することも重要となってくるのです。
※0 平成27年度国土交通省白書 ※1、2 「中古住宅流通促進・活用に関する研究会(参考資料)」平成25年6月/国土交通省 ※3 「人口動態統計年報 主要統計表」(厚生労働省) ※4 「Cold Weather Plan for England(イングランド防寒計画)2015.10」英国保健省イングランド公衆衛生庁 ※5 人口動態統計(厚生労働省) ※6 国立研究所調べ 参考資料/「住宅事情と住宅政策」国土交通省、「住宅の質の向上に関する各国の施策」国土交通省